夜食にカップラーメンを買ってみた。深夜にわざわざ米を炊くなどという面倒な作業をしたくないからだ。そして夜食ってのは食べたい時に食べないとなんとなく嫌なものだからだ。
コンビニに向かう。カップラーメンと決めて買いに行ったわけでもないのだが、コンビニ弁当ほどの量を食べて妙な満腹感を得てしまうとその後の徹夜作業にさしつかえるし、パンという手もあったのだが今夜はパンな気分ではない。そして目に入ったのがたまたまカップラーメンだったわけだ。普段カップラーメンなど食べない俺なのに、今夜はなぜが商品棚を一覧してしまった。最近のカップラーメンってのは「御当地なんちゃら系」やら「どこぞの名店の味」なるものが多いことに気づく。そんななかで俺の目にとまったのは写真の「新潟でみつけたー煮干し背脂系醤油ラーメン」だった。なぜこれに目がいったのかはわからないけど、能書きを読んでいると「ブツ切りたまねぎの~」って文字が目に入った。
おぉ!である。
ブツ切りタマネギと聞かされりゃ俺は大好きな「つけめん屋やすべえ」を思い出す。
「よしっ!食べてみよう!」なのだ!俺の頭の中に一瞬にして蘇るやすべえの味。いつも食べてるあの味、食べ終わった後に割りスープ(蕎麦で言うところの蕎麦湯みたいなもの、ちがうけどね)をもらい、そして酢をたらしスープを飲み干した時の満腹感と満足感。
「やすべえに行かずしても今夜はあの味を楽しめるんだ!なんて素敵な時代なんだ!コンビニに行けば売っているんだ!今夜の発見は俺の後々の徹夜仕事のスタイルを変えてくれるんだ!近所にあってくれてありがとう、ローソン! もう他のコンビニなんて行きやしない!ローソン、俺はお前に首ったけだぜぃ!」
焦る気持ちをおさえながら家に帰りさっそく湯を沸かす。
「早く沸いてくれぃ!湯よ!」
その間にパッケージを開け、中の薬味やスープを取り出す。
「おぉ!あるぞあるぞぉ!タマネギ入りの薬味袋がぁ!」
「待ってろよぉ!今その乾ききったお前のボディに湯をそそぎ、いつものりりしいお前の姿にもどしてあげるからなっ!」
湯が沸く。注ぐ。5分間待たなければいけない。
「早く5分経たないかなぁ。後入れスープはふたの上で暖めておくか。うんそうしよう!」
カップラーメンを食べることにこんなにワクワクしたことは一度もない。俺の脳裏にしっかりと書き込まれたやすべえの美味さを待ってのことだから仕方はないのだが。
5分経過!ふたをあける。スープを入れかき混ぜる。しっかりとそのりりしい姿をとりもどしたタマネギ達が俺を誘う「はやく食べてごらんよ」と。
「いっただきま~す!」
ローソンよ!愛しのローソンよ!ごめんなさい。さっきの言葉は忘れてください。他のコンビニだって行かせておくれよ・・・
違う!違うんだ!美味いとか不味いとか言ってるわけじゃないんだ。ローソンが悪いわけじゃない、これのメーカーが悪いわけでもない。
ただ少し、ほんの少しだけ俺が期待しすぎただけなんだ。許しておくれ!
やすべえの味がカップで食べれるはずなどなかった事に気づかない俺が悪いんだ!
ローソンで見つけた勘違いしちゃった系カップラーメンは悲しげに三角コーナーの住人となった。
「ごめんな、麺たちよ。明日の朝には半透明の袋に入れて旅立たせてあげるからなっ!俺とはほんの少し相性が悪かっただけなんだ。許しておくれ!」
げっ!明けたら土曜日じゃん!ゴミ出せねぇ~っ!
あ~ぁ、俺ったらな~に言ってんだか・・・